中国の次の新興産業は「空飛ぶクルマ」か( 2024年4月20日発表)
中国の電気自動車(EV)業界はここ数年で急速に発展している。企業側の努力のほか、中国政府が新エネ車産業の萌芽段階において産業配置やさまざまな政策支援をしたことも大きな役割を果たした。
空飛ぶクルマ業界にも現在、同じような状況が起きている。政府の誘導が再び同じような役割を果たせるかどうかに注目が集まっている。
出来事
広東省深セン市で2月27日、電動垂直離着陸機(eVTOL)の都市横断、湾岸横断のデモ飛行が行われた。深センから5人乗りeVTOL2機が離陸し、うち1機は人形を乗せて珠海まで飛び、車で片道3時間かかるところを20分で到着した。
EVメーカーの小鵬汽車(XPeng)は3月8日、広州のCBD(中心業務地区)上空で試験飛行を行った。中国ではこれまで、空飛ぶクルマの試験飛行は海上か郊外の上空で行われてきたが、今回は人やビルが密集する広州CBDの上空で実施され、大きな突破と試みとなった。
政策面の支援
中国では空飛ぶクルマやドローンをはじめとする民用航空機を中心に乗客・貨物輸送を含めた低空飛行活動によって関連分野の発展をもたらす経済形態を「低空経済」と呼ぶが、2010~2020年はまだ概念にとどまっていた。
中国国務院は21年に「国家総合立体交通網計画要綱」を公布し、「交通輸送プラットフォーム経済、中枢経済、通路経済、低空経済の発展」を提案した。この時に「低空経済」の概念が初めて国家計画に盛り込まれた。
深セン市は24年1月、「深セン経済特区低空経済産業促進条例」を公布し、インフラ、飛行サービス、産業応用、技術革新、安全管理などの面から低空経済の基準と監督管理関連の規定を説明した。
3月の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議、中国の最も重要な政策討論と制定の会議)の政府活動報告では、現代化産業システムの建設を推進し、バイオ製造、商業宇宙飛行、低空経済などの新成長エンジンの発展を加速させることが提案された。低空経済が政府活動報告書に盛り込まれたのはこれが初めてだ。
国営の中国中央テレビ(CCTV)は3月9日に空飛ぶクルマの特集を報道した。その中で珠海-深センの航路に言及し、耐空証明を取得した後、26年に有人飛行を開始する予定だと報じた。
EVメーカーの空飛ぶクルマ業界への進出における優位性
空飛ぶクルマはEVの技術と類似しているところが多く、本質的には同じく移動ツールで、いずれも電気駆動であり、運転支援システムを使用し、材料応用と技術応用においてEV分野と共通し、相互に参考にすることができる。
EVメーカーが消費者のニーズを把握し、ユーザー体験とコストを重視することは、空飛ぶクルマの開発にも有利になるだろう。
現在、小鵬汽車だけでなく、吉利汽車(GEELY)やBYD(比亜迪)、広州汽車なども空飛ぶクルマの開発を開始している。
億航智能(イーハン)はすでにタオバオのプラットフォームで有人ドローンを販売しており、販売価格は239万元(約5000万円)だ。
小鵬汽車はこれまでに「旅航者T1」「旅航者X2」「第6世代空飛ぶクルマ」など数種類の空飛ぶクルマを公開した。「第6世代空飛ぶクルマ」は陸上状態とフライト状態の2種類の運転モードがある。
小鵬汽車は世界最大級のテクノロジー見本市CESで「24年末に空飛ぶクルマの予約受付を開始し、25年第4四半期(10-12月)から納入する。販売価格は100万元(約2100万円)以内に抑える予定だ」と発表した。
小鵬汽車の何小鵬(ホー・シャオポン)最高経営責任者(CEO)は、「低空経済は来年、再来年には消費者の生活に徐々に入り、市場規模は今後5~20年でますます大きくなる」と予想している。
空飛ぶクルマの将来性と市場規模についてはまだ多くの議論があり、関連法規もさらに明確にする必要があり、空飛ぶクルマ自体の安全性やコスト、利益モデルにも疑問が多いが、注目すべき新興業界であることは間違いないだろう。